ご高齢の方で、外出の際に常にハンカチを握って持ち歩いている方を時々お見受けます。眼科の外来をやっておりますと「風に当たってすぐなみだ目になる」とおっしゃる方が多くいらっしゃいます。また、そのような方は、「年寄りになればなみだ目になるもので、治し様が無い」などなみだ目について半分あきらめておられます。そこで、今回はなみだ目の原因とその治療についてお話したいと思います。
まず、なみだ目はなぜ起こるのでしょうか。患者さんの多くは、涙が出る量がひとより多いので、なみだ目が起こると思っていらっしゃいます。確かに、涙が多く出て起こるなみだ目もあります。例えば、ゴミやコンタクトレンズのような異物が目に入った時、結膜炎、まぶたの縁の炎症、角膜の炎症などで、生理的ななみだ目が起きます。けれども、なみだ目を訴える多くの患者さんは、このような病気はなにも無いのになみだ目になっているのです。以前は少しの風が目に当たったくらいではなみだ目にはならなかったと思います。そもそも涙は上まぶたの涙腺でつくられます。感動したり悲しい時に涙がでるのが普通と考えられてますが、大事なことは、朝起きてから日中の活動時間には、目の表面が乾かないようにするため、ずっと少量の涙が出続けているのです。眼球表面が乾いてしまえば、眼球についた異物や細菌などの洗い流しや殺菌ができないのみならず、なんといっても目の表面(角膜)の透明の維持ができなくなってしまいます。そして、その涙は乾燥で1割が失われますが、残りの9割は、実は目頭近くにある細い通り道を抜けて鼻の奥に流れていくのです。この細い排水管を涙道(るいどう)と呼びます。この涙道が細く狭くなれば、あるいは詰まれば、排水がうまくいかずに涙はあふれ出てしまいます。まるで台所排水の詰まりのようなことが起きるのです。これがご高齢の方に多いなみだ目の原因です。
なみだ目を放置しても自然に治ることはございません。また、涙道が狭くなっている状態を薬で良くする方法もございません。涙道に貯まった細菌などにより、化膿などの炎症が起きやすくなります。このような炎症がおこれば、今後の治療はより難しくなります。これは、台所の排水管の工事と同じです。
治療の方法ですが、涙道の狭さの程度が軽ければ、切らないで治すことができます。これはシリコーンでできた専用のチューブを、涙道に挿入する方法です。局所麻酔後、詰まりが軽度で症状が軽い場合は片目5分くらいで終わります。もちろん日帰りで、健康保険も適用されている治療法です。シリコーンのチューブは、涙道の狭くなっているところを拡げ、涙の流れを良くします。早ければ挿入後1週間で、なみだ目が良くなっているのが実感できます。チューブは何ヶ月かいれたままにしておきますが、チューブが入っている間も普段通り、洗髪、入浴、運動、水泳もできます。なみだ目がひどくなり、涙道の詰まりがひどくなっている場合や、すでに炎症が起きている場合は、チューブを入れることは非常に難しくなります。このように、チューブが入れられない場合は、残念ながら手術治療が必要になります。
どんな病気でも早期発見、早期治療が大事であるといわれますが、なみだ目も例外ではありません。つまり軽いうちに適切な治療をすれば、治りがはやく、放置して重症化すれば簡単に治りません。なみだ目でお悩みの方は、眼科専門医の受診をおすすめ致します。